世界で活躍する
CBC 社員
中国
CBC上海支店に赴任して7年目。変化のスピードもビジネスのスケールも桁違いの中国市場で、樹脂、バッテリー・半導体分野、さらに食品から医薬関連資材まで幅広い商材を手がける。同時に、ナショナルスタッフ14名、日本人駐在員1名からなるチームを率いるグループマネージャーとしても活躍。そんな奥井が日々体験する刺激に満ちた海外駐在、中国ビジネスの醍醐味を語る。
桁違いのスピードと
ダイナミズム
世界最大、中国市場の変化のスピード、またビジネスのスケールやダイナミズムは、日本市場の比ではありません。例えばメーカーが新規ビジネスに参入する際、日本企業なら業績を見ながら徐々に設備投資を増やすのが普通でしょう。しかし中国企業は最初に「市場の何十%」といった大きな目標を立て、そこから逆算して一気に巨額の資金を投入します。また、私の扱う化学品の品質は今までずっと日本が優っていましたが、最近の中国のレベルアップには目を見張ります。設備の更新に慎重な日本と異なり、最新の設備に大規模な投資を一気に行うのが主な理由です。そのため日本企業の間でも、日本製から中国製にシフトする動きが広がっています。広大な国土の中で、こんな切磋琢磨、弱肉強食は日常茶飯事です。
赤字転落からのV字回復
中国最大の都市・上海は大手中小の各メーカーや商社がこぞって事務所を出しており、極めて競合が激しい環境でもあります。そうしたなかで赴任から3年目には、売上の約4割・利益の約2割を占める最大のビジネスを失って部署が赤字に転落したこともあります。これは中国の液晶関連部材の大手メーカーに、シンガポールの日系企業から毎月3000トン近いプラスチックを納めていた案件。契約条件がどうしても折り合わなくなり、他社に切り替えられてしまったんです。売上がゼロになってしまったのですから、私もスタッフもこの時はかなり気落ちしてしまいました。
一方、それと並行して私が取り組んでいたリチウムイオンバッテリーの新事業は、3年ほどで芽が出るとの確信がありました。バッテリーの外装に用いられるパウチ材の製造に多くの中国企業が参入しており、その原料を日本のサプライヤーから調達して供給するというビジネスです。まず懇意の設備メーカーを通じて上海でのネットワークを広げ、情報交換会などを主催。当社が各社の横のつながりを仲介しつつ、日系の主要なサプライヤーの情報をまとめて中国企業に提供しました。そうした活動を通じて中国のパウチ材業界ではCBCが最も詳しいとの評価をいただき、他社が扱っていた商流を当社へまとめてもらえるようになったんです。こういった取り組みが功を奏して、2021年は過去最大の利益を計上するまでに業績が回復しました。ビジネスの取捨選択は今でも悩みますが、その選択肢が無限にあるのが中国ビジネスの魅力です。
ウィンウィンの
コーディネートが商社の強み
日本と違って細かなことにこだわらない中国市場のスケールやスピード感は、「木の葉を見ずに森を見て商売をする」というイメージです。日本の商社である我々にできるのは、この「木の葉」の部分をサポートすることだと思っています。パウチ材の例のように新しい産業動向をいち早く掴み、パートナー企業をつなぎ合わせる。そうすることで日本企業だけでなく中国企業も成長する、ウィンウィンのコーディネート。これは商社にしかできない仕事の醍醐味です。「人」の違いも中国市場の面白い部分です。ひと口に中国人といっても非常に多様ですが、ビジネスでは日本人よりも論理的で発想のスケールが大きく、商売に入り込んでいく力が強い。当社の上海支店でも中国人の総経理(社長に相当)の下、優秀なローカルスタッフが多く育っています。みな日本文化、またCBCの価値観をよく理解して、真面目に長く勤めてくれています。自由にやりたいことに打ち込める、若手でも上司や先輩に気がねなく意見できる、といった当社の社風も彼らに評価されているようです。今後は有望な人材をどんどん引き上げ、マネージャー候補を育てていきたい。それが私の当面の大きな目標です。
大学卒業後にアメリカで2年間、プロゴルファーを目指して修行に励んだ。商社への転身を決意してCBCを選んだのは、「現地社員で、一番楽しそうに仕事のことを語っていた」からだ。入社4年目、2019年に中国に赴任した。中国・上海を拠点に、南米からロシアまで飛び回る奮闘が続く。ローカルスタッフが多い中、上司の奥井とはいい緊張関係で繋がり、信頼関係は厚い。
上海からメキシコ、
ブラジル、ロシアへ飛ぶ
上海に赴任して最初に商売を作れたのは、中国ではなくメキシコでの案件でした。商材は食品包材フィルム。カップ麺を包む薄いビニールのような素材です。
私の任務は、日系メーカーが中国工場で作った製品を海外向けに販売すること。そこでまだ誰も行っていないメキシコに注目し、日系の最大手食品メーカーの現地工場にアプローチしようと決めました。会社は、期待することもなく、とにかく経験を積んでこいというノリでOKしてくれたようです。契約は成立、自分でもびっくりです。これを契機にブラジル、ロシアなど計7カ国に販路を拡大。ロシアは2カ月前に決まったばかりで、継続的な取引になるよう注力しています。ロシア出張では初めてサメを食べましたが、おいしかったですよ(笑)。
改良を重ねて日系メーカーに
中国の原材料を売り込む
もう1つ上海で担当する主な商材が、半導体のチップを保護する封止材の原材料。中国の半導体業界では日系メーカーが封止材のシェアを75%近くまで押さえており、そこに中国メーカーの原材料を売り込む形です。
当初は日系メーカーが求める品質に届きませんでしたが、顧客の技術担当者にも協力を仰ぐ体制を作って改善を必死に繰り返しました。中国メーカーは、改良を重ねて追いつくスピードが本当に早い。ようやく最大手の日系メーカーに採用された時は、若い中国人社長と祝杯をあげました。赴任当初は月数十トンだったビジネスが現在は1000トンにまで拡大しました。こうした急成長を実感できるのも、中国ならではですね。
5G、EVなどの成長市場へ
いっそうの飛躍を目指す
封止材原料では、中国メーカーのオーナー社長を説得するのも重要な仕事。そこは現地スタッフと二人三脚で対応しています。上司の奥井と違い、私は現地スタッフと対等な立場。特に上海支店の業績に貢献できたことは、彼らとの関係でも大きなプラスになっています。
現在、封止材原料は上海支店の売上の2~3割ほど。これも先輩たちが種を蒔いてくれたおかげです。私はさらにその横展開を追求し、5G、EVといった成長市場で新規関連商材を開拓していくのがテーマ。ハードルは高いですが、チャンスが巡ってくることを確信して種蒔きに努めています。