- 目次
-
2025年に創業100周年を迎えるCBC株式会社。その中でも最も長い歴史を持つケミカルズ&マテリアルズ ディビジョンは、2024年に組織の一部を改変、東京に拠点を置く「第1グループ」が「電材・機能化学品ユニット」と名前を改めました。
同ユニットはディビジョンのなかでも新規事業立ち上げを主な役割としており、現在は高機能品の営業活動を通した「高付加価値なサービス提供」に取り組んでいるとのこと。電材・機能化学品ユニットがいま販売を手掛けている高機能品と、その営業活動について紹介します。
ビジネス環境の変化と、商社が提供できる新たな価値
企業による「より早く、そして安く」を目標とした購買活動が行われることで、取り引きに商社を介して発生する費用は「余計なもの」としてコストカットの対象に。仲介者がコーディネートを行わずとも生産者と売り手が直接取引を行える環境が生まれ、商社は「仲介」の手続きによる優位性を失いつつあるのです 。
そういった購買活動の変化を受けて、これからの商社は、どのような在り方を目指すべきなのでしょうか。
ケミカルズ&マテリアルズ ディビジョン(以下、CMディビジョン)では、化学品を専門に扱うCBCの屋台骨として、これまで化学製品や電子材料といった、幅広い用途で使われる「汎用品」を中心に取り引きを行ってきました。それに加えて近年は、ビジネス環境の変化を受けた「商社の価値」を示す新しい道として、「高機能な製品を通した、高付加価値なサービス提供」に注力しているといいます。
高精度・高品質な加工が可能な「UV接着剤」
CMディビジョン内に新設された「電材・機能化学品ユニット」が、いま特に注力して取り扱っている製品のひとつがUV硬化型接着剤(以下、UV接着剤)です。
塗布してから乾燥・硬化までに一定の手続きと時間がかかる一般的な接着剤に対して、 UV接着剤は紫外線の照射から硬化までの時間は、なんと5秒以内。圧倒的な時短となるだけでなく、「接着と硬化」をひとつの動作として行えるので工数削減も可能。硬化時間が短いため接着時の位置ズレも起きにくく、高精度の加工が必要な機器でも使用できるのが強みです。
そんなUV接着剤ですが、高機能である反面コストが高いため、現在は「UV接着剤で無くてはならない」限られた用途を中心に使用されているのだとか。身近にあるもので代表的なのが、スマートフォンや自動車等の電子機器に搭載される光学式モジュールです。
繊細な加工が求められる製品では、UV接着剤の「高精度の加工に対応できる」強みが必要不可欠。電子機器のような熱に弱い製品を取り扱う際にも、UV接着剤が適切とされるケースも少なくありません。
UV接着剤のパイオニア・DYMAX社、その技術とポリシー
CMディビジョンの電材・機能化学品ユニットが取り扱うUV接着剤は、アメリカに本社を置くダイマックス(DYMAX)社のもの。同社は、およそ40年の歴史を持ち、先端技術の領域で幅広い導入実績を持つ、いわば「UV接着剤のリーディングカンパニー」です。
同社はUV接着剤と関連する製品はできるだけ自社で手掛けるのがポリシーで、メイン商材であるUV接着剤だけでなく、その原料となるオリゴマー も自社で生産。接着剤を使用するためのUV照射器や接着剤の塗布機、各種機器に内蔵する半導体までを自社開発しています。
さらには、ユーザーへ向けたUV接着剤を中心にした加工プロセスの提案、自社製品の導入サポートを徹底して行うなど、「UV接着剤を通した、バリューチェーン最大化」のための労力を惜しまない企業なのだとか。
また、幅広いUV接着剤のグレード(規格)を用意しているのもダイマックス社の特徴のひとつです。
ダイマックス社独自の技術で、接着剤の完全硬化を目視で判別できるのは、他社製品には無い利点。その品質は世界中から認められており、世界の医療分野におけるUV接着剤シェア の1/3がダイマックス社の製品によって占められています。
光学機器は、センサーとレンズが少しでもずれたり、ガスの影響を受けたりするだけで、本来の機能を果たせなくなるほど繊細なもの。各社が手掛けるUV接着剤よりも「光学機器本来のスペックに与える影響が極小である」ことが、ダイマックス社のUV接着剤が精密機器で重宝される理由なのです。
高機能品の国内販売を支える、CBCの提案力
CBCは、そんなダイマックス社製品の日本における販売代理店となっています。その役割を担うのが、電材・機能化学品ユニット。同社の市場拡大のため、国内向けのマーケティング・営業活動、お客様に合わせた製品紹介やソリューションの提案などを主に担当しています。
買い手にとって馴染みの深い汎用品に対して、高機能品はまだまだ存在自体を知る人が少ないのが現状です。高品質な製品であっても、売り手の適切な活動がなければモノが必要な人の手に届くことはありません。そこで強みとなるのが、代理店であるCBCによる「製品への深い理解」と、知見から生まれる「提案力」です。
UV接着剤の営業担当となるCBCの社員は、ダイマックス社、ひいては同社のUV接着剤を十分に知るだけでなく、その特徴や機能を説明する準備ができていなくてはいけません。
電材・機能化学品ユニットでは、製品に対する理解を深めるためダイマックス社を訪問して現地の技術者とコミュニケーションする機会を設けたり、営業担当の社員に向け研修や試験を実施したりするなど、製品を学ぶ機会を整えています。 こういった丁寧な製品インプットは、製品の強みや特徴、最適な使い方を「自信を持って」「必要十分に」説明するためには欠かせないもの。
またCBCには、多くのお客様との取り引きを通して、「ものづくりの現場」に対する知見と課題解決のノウハウが蓄積されています。国内メーカーが抱える課題や悩みと関わってきたことによる「市場」そして「買い手」への深い理解が、高機能品の販売に向けた「CBCの提案力」を支えています。
営業スタイルの切り替えが、新しいビジネスチャンスに
電材・機能化学品ユニットの担当者いわく、UV接着剤のような高機能・高付加価値 の製品は、「営業スタイルが、汎用品とはだいぶ異なる」のだとか。その大きな特徴は、その手続きが「売り手主導」であることです。
オンリーワンの機能を有する高機能品では、お客様へ「その製品でしか実現できないソリューション」を提供できます。そのため、価格や買い手との関係性ではなく、商品の力と提案力で営業・販売活動ができるように。他のものでは代替できない製品を適正価格で販売するスタイルは、社員には高いスキルが求められるものの、営業活動の負担軽減にも繋がります。
リアルとデジタル、それぞれの方法で高機能品にあわせた営業活動を展開した結果、CBCとしてこれまで取り引きが無かった企業や、ダイマックス社が実績の無い業種のお客様とお会いする機会も増えてきているそう。
高機能品をきっかけにした新しい取り組みが、次のビジネスのチャンスを生むように。商社の強みと製品の力を組み合わせた「高付加価値なソリューション提案」が、CBCに良い循環を生み出しているのです。
専門性に突き抜けた営業スタイルを追い求めたい
CMディビジョンの電材・機能化学品ユニットによる高機能・高付加価値な分野への挑戦は、UV接着剤以外の製品でも積極的に行われています。
例えば、見る角度によって色味が変わる塗料「クロマフレア」。他には、人の目だけでなくレーザー光を用いたセンサーによる可視性を向上させる特殊顔料も、UV接着剤と同じく海外メーカーの販売代理店として扱う製品のひとつです。 高い機能を持つ製品をCBCによる提案力と組み合わせて届ける「高付加価値なソリューション提案」が、UV接着剤以外の分野でも行われています。
また、汎用品の取り扱いにおいても「売り方次第では、まだまだ商社の価値を示す方法はある」と、電材・機能化学品ユニットの担当者は語ります。
例えば、海外企業の製品を輸入する際には、通訳はもちろん、輸入元の企業や国の情報収集、輸入の手続きやその資金を調達する貿易金融(トレードファイナンス)、他にも日本国内におけるマーケティングなどの手続きが欠かせません。海外へ製品を輸出する場合であっても、同様の手続きを担う「誰か」が必要になります。そういった、トレーディングビジネスにおける売買のコーディネートを担うことも、商社のまだまだ価値のある役割のひとつです。
化学系の商社としてCBCそしてCMディビジョンが将来的な発展を目指すため、今後は高機能品や汎用品、いずれのフィールドでも高付加価値なサービスを提供していくことが必要不可欠になっていくでしょう。
そのために求められるのが、ビジネス環境の変化を敏感に捉えることと、営業活動を行う社員一人ひとりの知識や専門性。「商社としての提案力」は、高付加価値なサービスのために今後は無くてはならないものになっていくでしょう。新しい領域でビジネスの可能性を探り、結果を出すのは「突き詰めた専門性を持っている人」なのです。
取材・文=伊藤 駿/編集=ノオト