CBC上海（当時は中外貿易の上海駐在事務所）は1994年4月に営業を開始しました。1990年代の中国には技術力もグローバルな人材も資金もありませんでした。あるのはローエンド製品や資源だけで、私たちの主なビジネスは中国の安い原材料を日本や欧米に輸出し、代わりにそれらの国からハイエンド製品を中国に輸入することでした。
2000年代に入り、中国はWTOに加盟し、多くの外国企業が中国に生産拠点を設け、安価で良質な製品を求めるようになりました。 CBC上海はその機会を逃さず、信頼性が高く競争力のある良質な中国の原料を世界中の企業に提供しました。同時に、CBC上海は国内のメーカーとも強い関係を築きました。
経済成長が続き、80年代、90年代生まれの若い世代が収入を得るようになり、2012年以降、国民の個人消費はGDPの50％を超えるまでになりました。 中国では、医療、介護、環境保護製品が歓迎されており、CBC上海はさらに輸入ビジネスに力を注いでいます。

先ずボールを転がして、必要に応じて調整する中国の経済成長が拡大して世界経済に影響を与えるようになると、中国や中国人について学ぶ機会も増えました。しかし、CBC上海から見ると、中国と他国、特に日本との間には、まだまだ考え方やビジネス・スタイルにギャップがあるように感じられます。
中国では「先ずボールを転がして、必要に応じて調整する」と良く言われます。「チャイナスピード 」という表現がよく使われます。 「GO」を出すと決めたら、直ぐに行動に移します。 方法、マーケティング、技術的課題等は後から考えます。速く行動すれば、間違いなく後からさまざまな問題に直面する可能性が高いのですが、中国人は必ず問題の解決法を見つけだします。このようなビジネス・スタイルは「歩幅は小さく早く走る。試して、失敗して、すぐ直す」とも表現されます。これは世界で5本の指に入るIT企業、Trecentが自社の戦略を述べたものです。
中国でビジネスを行う外国企業は、中国の規制がどんどん変わるので対応できないとよく言います。最近では、環境問題、安全審査、医薬品規制の改定などが中国ビジネスの条件に大きな影響を与えています。中国は安定供給能力に欠けているのではないかと疑う人もいます。しかし、中国のビジネス・スタイルを理解すれば、よりよいビジネス環境の未来が見えてくるでしょう。
一方で日本のビジネスは、入念な準備と事前調査を行い、いったん事業を開始すると方向を変えたがらないと言われてきました。どちらの戦略がいいかは別として、私たちは中国と他の国々の市場を結ぶ懸け橋になりたいと思っています。

CBCと他の日本企業の最も大きな違いは、CBCが中国現地の現実に目を向け、その状況に合った最適なビジネス運営を行おうとしている点です。CBCは従業員の意見や考え方を尊重して主導権を与えてくれます。私はこれこそが本当のグローバリゼーションの姿だと思います。
2016年11月、CBC上海は中国の東北地方にある長春の医薬品販売会社と合併し、CBC（長春）医薬有限公司として登記しました。CBC長春の主なビジネスは医薬品（原薬、製剤、賦形剤、医療機器）の販売ですが、生物学的同等性の研究、医薬品技術サービス、不純物標準の開発など、医薬品関連サービスも提供しています。私はCBC長春の法的代表者です。設立にあたり、外資企業による小規模医薬品販売会社の運営に中国政府が難色を示すという問題に直面しました。しかしCBC本社は、CBC上海をCBC長春の大株主とし、CBC長春の社員を全員中国人とするCBC上海の提案に耳を傾けてくれ、合弁の全プロセスはスムーズ且つ迅速に進みました。

この24年間のビジネスの中で最も印象に残っているのは、CBCのグローバライゼーションに対する考え方と姿勢です。 初期の段階では、CBC本社がCBC上海に多くのビジネスチャンスを紹介してくれました。2000年代にはCBC本社がCBC上海と他の支店との直接取引を奨励し、最近5～6年は中国のビジネスの方向性や会社経営についてCBC本社はCBC上海の視点をよく聞いてくれます。 CBCグループのグローバライゼーション、ローカライゼーションに対する考え方は本当に先進的だと思います。
CBCグループの一員として働く最大の魅力は、CBCが現場での活動を常に全面的にサポートし、現地の事情に対する私たちの意見に丁寧に耳を傾けてくれ、働きやすい環境を創り出してくれることです。
このようなポジティブな環境の中で、私たちは今後も中国でさまざまな新しいプロジェクトに挑戦し、CBCグループならではの価値を提供し続けたいと考えています。