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より安全な医薬品の安定供給を目指して、医薬品試験施設ができること

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より安全な医薬品の安定供給を目指して、医薬品試験施設ができること
目次

    CBC医薬品分析センターの挑戦

    世界中で次々と生み出される医薬品。それらは、できたらすぐに販売できるものではなく、「安全性・有効性、品質などが日本の基準を満たしているものか」国の審査・承認を受けて初めて国内で流通できるようになります。
    医薬品の試験を担当する国内の検査施設は、いわば“薬”の品質を担保する「最初の存在」。私たちの健康を守るすべての“薬”は、試験検査施設での厳しい品質試験を経て、ようやく手元に届くようになるのです。

    CBCは、神奈川県川崎市のかながわサイエンスパーク(KSP)内に医薬品試験検査施設「CBC株式会社医薬品分析センター」を持ち、世界各国で生産された医薬品原薬の品質試験を行っています。
    本日は、そんなCBC医薬品分析センターを訪ね、施設の役割や取り組みの意義についてお話を伺いました。

    海外生まれの医薬品が、消費者の手元に届くまで

    CBC(KSP)_111 皆さんは、海外で開発・生産された医薬品が国内に輸入される際、どういった過程を経て患者さんのもとに届くのか、ご存知でしょうか?

    例えば、医薬品の有効成分である「医薬品原薬」を輸入する場合、海外のメーカーで生産されたものを輸入しても自由に販売することはできません。日本においてすべての医療用医薬品は、流通前に厚生労働省からの承認を得ることが義務付けられています。承認を得ていないものは、国内流通に先立って安全性・有効性、品質の観点で根拠となるデータ等について審査を受ける必要があります。
    一方、すでに国からの承認を得ている医薬品であっても、医薬品原薬の輸入後には必ず、承認された品質規格に適合しているか、試験検査施設による品質試験を行います。そういった厳しい品質チェックの行程をパスした医薬品原薬のみが、国内の市場に流通し、“薬”となって患者さんの手元に届くのです。
    CBC(KSP)_065 かながわサイエンスパークに拠点を構える医薬品分析センターは、医薬品製造業の許可を持つCBC株式会社が運営する、医薬品の試験検査施設です。製造業者に求められる医薬品の製造管理及び品質管理の世界基準である『GMP(※)』要件に適合した試験検査施設で、国内に輸入される医薬品原薬の試験検査業務を行っています。
    ※ “Good Manufacturing Practice”の頭文字を取ったもの。「人為的な誤りを最小限にすること」「医薬品の汚染及び品質低下を防止すること」「高い品質を保証するシステムを設計すること」が、三原則として定められている
    CBC(KSP)_080 医薬品分析センターで行う業務は大きく分けて「品質管理業務」と「開発業務」の2つに分かれます。

    品質管理業務は、輸入した医薬品原薬が承認された品質規格を満たしているかを確かめるもの。すでに国の承認を得ている医薬品原薬を、輸入ごとに、医薬品原薬が承認時に定められた品質規格に適合しているかを、製薬会社へ販売する前に医薬品分析センターで確認するのを主要な業務としています。

    もうひとつの「開発業務」とは、おおまかにいうなら「品質規格が定められていない医薬品原薬に対して、品質規格及び試験方法を定め、その適切性を確認する」業務です。
    そういった医薬品分析センターの業務の「品質管理業務」と「開発業務」について、それぞれ詳しくご紹介します。

    品質試験を通して、流通する医薬品原薬の品質を担保する「品質管理業務」

    医薬品分析センターでは、輸入した医薬品原薬について品質試験を実施し、
    品質規格に適合している否かを確認しています。

    国の承認を得た医薬品原薬は、国内の製薬会社の手に渡り、最終的には医薬品すなわち“薬”となり、患者さんの手元に届きます。そのように“薬”を流通させていくためには、製薬会社や患者さんのニーズを十分に満たしていているとともに国内の市場にあったものでなくてはいけません。
    そのうえ、日本の要求基準は海外と比べて高いとされており、医薬品分析センターで医薬品原薬の品質試験をした結果、不適合の判定となる場合も。「先月輸入したロットは規格に適合したが、今月輸入したロットは不適合だった」ということもあります。
    ここで不適合の結果が出た場合、医薬品分析センターが着手するのが、「なぜ適合しないのか」を様々な手段をもって原因調査していくことです。

    例えば、不適合の結果をそのまま受け取るのであれば「医薬品原薬の品質自体に問題がある」と考えるところですが、一方で「医薬品分析センターで行った品質試験の手順に問題がある」可能性もゼロではありません。海外メーカーでも同様の品質試験を実施し、適合したロットのみを日本に輸出するわけですから、「品質試験の手順には問題がなかったのか」「なぜ、海外メーカーと医薬品分析センターで試験結果が異なるのか」等、様々なプロセスの検証が必要になります。
    そんな検証作業のなかで、時には医薬品分析センターの職員が海外メーカーの生産拠点へ足を運ぶことも。現地に滞在して、品質試験の手順や機器等の管理状態をチェックし、場合によっては一緒に試験を実施して細かな操作の違いを明確にすることもあるのだといいます。
    そういった、ありとあらゆる可能性を考慮し、粘り強く原因と改善策を探していくのです。
    また、品質試験を実施する環境(気温や湿度といった要因)も結果に影響を与える可能性があるため、常に同じ条件下で品質試験を行えるように分析センター内は室温が常に一定に保たれています。品質試験の手順だけではなく、使用する試験機器や試験器具の定期的なメンテナンスと校正は欠かせません。そういった運用も、品質管理業務の一部です。

        

    医薬品原薬の新しい品質規格と試験方法を定める「開発業務」

    一方で、国内に輸入しようとする医薬品原薬のなかには、公的に品質規格が定められていないものも少なくありません。そういった医薬品原薬に対する新たな品質規格と、医薬品原薬の輸入時に行う品質試験の方法を定めるのが、医薬品分析センターにおける「開発業務」です。

    これまで国内で流通させたことのない医薬品原薬に対して適切な品質規格と試験方法を定めるためには、類似する医薬品原薬や諸外国ですでに定められている品質規格を参照するなど、医薬品分析の専門家の視点が必要になります。新しく設定された品質規格と試験方法は厚生労働省へ提出され、承認がなされます。
    また、試験方法は定めたら終わりではなく、その試験方法が品質規格を確認するために適切であるか、精度や再現性(一つの対象に対して、繰り返し試験を行っても同等の結果が得られること)等、複数の観点で検証する「分析法バリデーション」も実施しています。

    これらの検証は審査の対象であり、時に国から品質規格の見直しや追加の試験を求められることもあります。審査期間は限られているため、当局の意向を汲み、限られた時間内に妥当性を示し、必要があれば追加検証をするキャパシティーも必要です。
    いくら医薬品原薬の品質自体がよいものであっても、それを証明する品質規格と試験方法が審査中に認められなければ、医薬品原薬を世の中に出すことはできません。「医薬品分析センター」という名前ではあるものの、世界各地のメーカーから届いた医薬品原薬をただ試験することだけがこの施設の役割ではないのです。

    商社であるCBCの強みを生かした調整力と、海外メーカーとの強固な関係

    img_03_pc CBCでは、医薬品原薬の取引に係る他のチームと医薬品分析センターが一丸となって、グループ会社であるプロコスを始めとする欧米、インド、中国の海外メーカーとの協業に取り組んでいます。なかでも大切にしているのは、現地の担当者や責任者レベルと関係を築くことだけではなく、経営陣と顔を合わせる機会も作るように心がけています。ただ医薬品原薬を輸入・試験するプロセスを円滑にさせるだけではなく、協業を通して「日本国内全体における医薬品原薬の供給を安定化させる」ことを目指しています。
    例えば、国内の品質試験で「規格に適合しない」と判定された医薬品原薬は、国内で販売することはできないため、海外メーカーに返品されることになります。その結果として国内に輸入される医薬品原薬が減り、さらに供給が不安定になると患者さんの手元へ十分な量の“薬”が届かなくなることも想像に難くありません。
    R10 DAY s そんなとき医薬品分析センターの職員が、海外メーカーへ足を運び、メーカー職員と「不適合」とされた原因究明にあたります。そのプロセスの中では、試験方法の統一化を図ることの他にも、CBCとして海外メーカーの医薬品原薬に係る管理体制やGMPの対応状況を指導することも。こうして海外メーカーと協業することで、より安定した管理体制を整えていくのです。
    世界各地へ医薬品原薬を販売している海外メーカーにとっては、日本は「規模はそこまででもないのに、要求基準が高い」市場です。一方で「要求基準の高い日本で承認を得ている」ことは、海外メーカーが持つ技術や医薬品原薬の品質、そして対応力を対外的に示す大きな付加価値になる場合も。日本の高い基準を満たすために協力関係を結ぶことで、医薬品原薬を受け取る分析センター側だけでなく、海外メーカー側にとっても大きなメリットを得られます。
    海外を行き来するのは大変でも、実際に足を運び、生産現場を見せてもらいながら戦略を立てたり、直接顔を合わせて会話したりするだけでも、会社と会社の関係性はより強固になっていきます。喧々諤々な議論の場面も少なくありませんが、すべては品質の良い医薬品原薬を届ける目的のためのものです。共通の目的を達成するために海外メーカーとCBCとでどれだけ歩み寄れるか、協力できるか、調整力が試される場面でもあります。
    もちろん、同じ海外メーカーと取引をしている国内企業はCBCだけではありません。技術指導の結果、安定した品質の医薬品原薬が製造できるようになれば、「CBCを介した輸入でなくても」国内全体への医薬品原薬の供給が安定することになります。

    こういった「一歩踏み込んだ対応」が行えることも、現地のメーカーと十分な関係性を持つCBCならではの働きなのです。

    「安全な薬の安定供給」にむけて、CBCができること

    現在は、新型コロナウイルスの流行やウクライナ情勢からくるエネルギー不安など、世の中の変化により、いつ流通に深刻なダメージが出るかもわからない状態が続いています。
    そんなときに、あらかじめ国内と海外の品質試験の質やレベルを合わせておくことができれば、国内の基準に満たず返品せざるを得ない医薬品原薬を最小限にできる。CBCの取り組みが、めぐりめぐって日本全体の医薬品原薬の安定供給につながっていくのです。

    患者さんに届く“薬”の「最初の品質を担保する存在」としての医薬品分析センター。安全な“薬”の安定供給の実現に向けて、医薬品分析センターは、これからもその務めを果たしていければと思っています。

     

    編纂・撮影

    取材・文=伊藤 駿/写真=早川達三/編集=ノオト

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